ストレスの多い現代社会
仕事、家事、人間関係や季節の寒暖差など…
毎日の生活で、様々なストレスを感じることはとても多くありますが、逆にリラックスしたり、ゆっくりする時間を作ることはなかなか難しいですよね。
薬剤師である僕も、仕事や日常生活で多くのストレスを感じています…
そこで今回は、香りをかぐだけで簡単に、ストレスを和らげるのに役立てることができる、4つの精油をご紹介します。
それぞれ良い香りでとても気分が良くなりますし、さらにそれらの精油を使ったオススメのブレンドもご紹介します。
この記事でご紹介する精油は、実際に僕が使っていてリラックスできましたし、世界中の臨床研究で人に精油を吸入してもらった結果も出ているので、信頼できるものとなっています。
また、精油が心や体に作用するメカニズムについてもご紹介します。
精油が心や体に作用するメカニズム
精油のにおいを嗅いでリラックスしたりできるのはなぜでしょうか。
単にいい香りがするから、と思われる方もいらっしゃいます。
でも、実はそれだけではなく、きちんとしたメカニズムが存在するのです。
精油が心や体に作用する経路は大きく分けて、次のような3つがあります。
①鼻から嗅いだにおいが、鼻にあるにおいを感知する細胞にくっつくことで、その情報が電気信号に変換されて脳へ伝わるルート
②鼻から嗅いだにおいが、肺の血管から吸収されて全身に回るルート
③皮膚から浸透して伝わるルート
今回の記事で紹介している研究では、全て芳香浴法(吸入)が用いられているので、主に①と②のルートで、精油が心や体に良い影響を与えてくれていると思われます。
特に①のルートは、電気信号として送られたにおいの情報が、視床下部という脳の一部にも伝わります。
視床下部には、体の環境を一定に保ってくれる自律神経や、ホルモン分泌の調節をする内分泌系、体を病気などから守る免疫系を整える重要な役割があります。
つまり、精油のにおいが、体の調整をしてくれる視床下部に働きかけて、それが心や体のバランスを整えてくれることにつながります。
もちろん②や③のルートでも、心や体に良い影響を与えてくれることが、様々な研究でわかっています。
ストレス解消にオススメの精油
ベルガモット
柑橘系の中でもオレンジよりも甘さ控えめな、上品でスパイシーな香りです。紅茶のアールグレイの香り付けにも使われています。
他の研究では、睡眠に良いという結果も出ているので、この精油だけでもとてもリラックスできるでしょう。
健康な女子大学生42人に「ベルガモットの香りを嗅ぐ」「水蒸気を嗅ぐ」「何も嗅がない」を順番に体験させたところ、ベルガモットの香りを嗅いだときにストレスが減少したことが分かりました。
Effects of bergamot ( Citrus bergamia (Risso) Wright & Arn.) essential oil aromatherapy on mood states, parasympathetic nervous system activity, and salivary cortisol levels in 41 healthy females. Forsch Komplementmed. 2015;22(1):43-9.
ベルガモットには、皮膚につけると、紫外線に反応して炎症やシミなどができる、フロクマリン類が含まれています。
皮膚につかないように注意してください。
しかし近年では、そのフロクマリン類を取り除いた、フロクマリンフリーの精油も販売されているので、皮膚につけるトリートメントオイルなどを作る際にはそちらを使えば安心です。
ジャーマンカモミール
香りはフルーティーな甘さと干し草を思わせる香ばしさを感じられます。世界中で栽培され、ハーブティーとしても好まれています。
また、精油にはカマズレンという成分が含まれるので、濃い青色をしているのが特徴です。このカマズレンは、抗酸化物質であるα-トコフェロールよりも強い抗酸化作用を持っています。
65歳以上の参加者183人をカモミール(濃度1.5%)、ラベンダー(濃度1.5%)、水蒸気グループに分けて30日間吸入してもらったところ、カモミールとラベンダーを嗅いだグループは、抑うつ、不安、ストレスが減少したことが分かりました。
The effects of Lavender and Chamomile essential oil inhalation aromatherapy on depression, anxiety and stress in older community-dwelling people: A randomized controlled trial. Explore (NY). 2022 May-Jun;18(3):272-278.
ラベンダー
アロマと言ったらラベンダーを最初に思い浮かべることが多いほど、馴染み深い香りの一つです。
落ち着きのある甘さと、ハーブのようなスッキリさも持ち合わせていて、リラックスしたいときにはぴったりな香りです。
心臓手術予定の90人をラベンダー精油と蒸留水の2つのグループに分けて、20分間吸入してもらったところ、ラベンダー精油を吸入したグループは、ストレスの指標となる血中コルチゾール濃度が約70%も低いことが分かりました。
Effect of lavender essence inhalation on the level of anxiety and blood cortisol in candidates for open-heart surgery. Iran J Nurs Midwifery Res. 2016 Jul-Aug;21(4):397-401.
ネロリ
ネロリはビターオレンジの花から採れる精油です。ビターオレンジの花と言われたら納得できるような、少しビターな落ち着いた香りの中に、さわやかな甘さがある香りで、とてもリラックスできます。
精油の名前は、イタリアのネロラ公妃が愛用したことから、ネロリと呼ばれるようになりました。
健康な閉経後女性63人を濃度0.1%のネロリ精油、0.5%のネロリ精油、アーモンドオイルの3つのグループに分けて、1日2回、5日間吸入してもらったところ、QOLを改善し、血圧を低下させることが分かりました。
Effects of Inhalation of Essential Oil of Citrus aurantium L. var. amara on Menopausal Symptoms, Stress, and Estrogen in Postmenopausal Women: A Randomized Controlled Trial. Evid Based Complement Alternat Med. 2014;2014:796518.
アロマブレンドデザイナーおすすめブレンド
ここまでリラックスするのにオススメな精油を4つご紹介してきました。
それぞれ単体でもいい香りでリラックスできますが、ジャーマンカモミールやネロリは、それだけでは少しクセのある香りだと感じる方もいらっしゃると思います。
しかし、それらを上手にブレンドすることでバランスが取れて、とても使いやすい香りになります。
そこで今回も、アロマブレンドデザイナーである僕が実際に試して、オススメできるブレンドを作りました!
ベルガモット:ラベンダー:ネロリ:ジャーマンカモミール=4:3:2:1
落ち着きのある爽やかさと甘さを感じて、リラックスできるブレンドに仕上がりました。ストレスを感じたときにはこのブレンドを香って、ゆっくり心と体を休めてみてはいかがでしょうか。
ご自分でブレンドされる際には、このレシピを参考に好みの香りにしてみてもいいですね(^^)
お使いになる際には、コットンやティッシュに精油を垂らして、そのまま作業スペース付近で香らせる芳香浴が1番簡単ですが、ディフューザーで部屋全体に香らせるのもオススメです。
精油は雑貨です。医薬品ではありませんので、飲んだり皮膚に付けないでください。
研究で得られた結果が全ての方に当てはまる訳ではありませんのでご了承下さい。
精油を使用する場合、全て自己責任でお願いします。
芳香浴中に体調が悪くなった場合は、換気などを行い、改善しない場合は医療機関を受診してください。